転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


14 危険地帯と神様



「そもそもこの村の近くにある森に魔物がいるのだって、あの森の奥に魔力溜まりがあるからなんだぞ。あまり大きくはないが、それでも魔力溜まりの半径5キロほどはその影響を受けているから森の外周辺りでさえ魔物が出る。そしてその魔物も、魔力溜まりに近づくほど強くなるから、俺たちでもあまり奥までは狩りにいかないんだ」

「ちかくなるほど、つよくなるの?」

「ああ、浴びる魔力が強くなるからなんだろうな。野うさぎから変質するにしても外周なら一角ウサギ程度だけど、中心部まで行けば最悪ドリルホーン・ラビットにまで変質するかもしれない。まぁ、今まで一度も見つかっていないから、それは杞憂と言うものかもしれないけどな」

 ドリルホーン・ラビットか、確か巻貝のような大きな角がある大型犬くらいの大きさのウサギの魔物だったよな。
 確か6人パーティーでも18レベル以上になって、やっと狩り始める事ができるようになるモンスターだっけ。
 と言う事はもしそんなのが出たとしたらグランリルの村人総出でかからないといけないだろうし、最悪何人かの死者が出るかもしれない。
 実際にはいないことを祈ろう。

「こわいまものが、もりのおくにはいるかもしれないんだね」

「そうだぞ。だから絶対に森の奥に行ってはダメだ。大人たちでも奥に入る時は完璧な体勢を作った上で、必ず5人以上で行動するくらいだからな。ルディーンもいずれ森に狩りに出かけるようになるんだろうけど、その事だけはよく覚えておくんだぞ」

「うん、ちゃんとおぼえておくよ」

 これがラノベ主人公ならチート能力を使って森の奥にいるモンスターでレベル上げだ! なんて話しになるんだろうけど、僕なんかが行ったら最悪の事態になるとしか思えないもん。
 それこそ賢者のレベルを、1匹相手ならドリルホーン・ラビットでもソロで倒せるようになる24以上まで上げることができたら、その時はまた考えるけどね。

と、ここで一つ疑問が。

「おとうさん、まりょくだまりがあるところって、みんなもりになるの?」

 もしそうなら海には魔物がいないって事になるから多分違うとは思うんだけど、これだけは確認しておかないといけないと思ったんだ。
 将来的に何かの理由で遠出しなければいけなくなった時に、これを聞いておかなかった為に知らないうちに魔力溜まりに近づいていたなんて事もありえるからね。

「いいや、別に森にばかりあるわけじゃないぞ。事実この国周辺で一番大きな魔力溜まりは、このグランリルの村から見て東にある都市、イーノックカウから80キロ以上離れた場所にあるカロッサ領の更に30キロほど離れた所にある、魔の草原と言われる場所にあるらしいからな。そこは最高ランクの冒険者でも足を踏み入れたら命の保障はないと言われるほど、強い魔物が沢山いるという話だ」

「そうげんにもあるんだ。ならしらずにちかづいちゃうこともありそうだね」

 森と言う目印があるならともかく、草原にもあるのなら気付かずに近づいてしまって危険な目にあうと言う事もありそうだ。
 そう僕は思ったんだけど、そんな考えをお父さんは笑いながら否定してくれた。

「その辺は大丈夫だ。さっきも言った通り、魔力溜まりは近づけば近づくほど魔物が強くなる。だからたとえ新たに出来て誰にも知られていない魔力溜りがあったとしても、危険になるほど近づく前に魔物の強さで誰でも気が付くからな」

「でも、どうぶつがあまりいないところだったら?」

 森や草原と違って岩山とか荒野にはそれ程動物はいない。
 餌が豊富な場所に魔力溜りができれば周りの動物の変異で知る事ができるだろうけど、荒野とかの荒れた土地に魔力溜りができたらどうなるんだろうと考えると、魔物の強さだけで判断するのは危険なんじゃないかな? って思うんだ。

「おっルディーンはそんな所にまで頭が回るのか。偉いぞ。だけどその心配はしなくてもいい。これは不思議な話なんだが、動物があまりいないところには魔力溜まりはできないようなんだ」

 でも、そんな僕の心配は杞憂だったらしい。
 理由はよく解っていないらしいんだけど、生き物が住むには適さない土地には魔力溜まりは何故かできないらしいんだ。
 これには色々な説があるらしいんだけど、魔力溜りが成長するのに動物が関係しているんじゃないかって言われてるんだって。

「人が住む場所で魔力溜りができないことから考えても、野生の動物と魔力溜まりに何かの関係があると考えている人が多いみたいだね」

 そう言えば、生き物が住むのに適している所に魔力溜りができると言うのなら村や町にできないのは不思議だね。
 と、そこまで考えた所で、僕はある考えに至る。

 これってゲーム的な都合によるんじゃないかな?

 ゲームの世界では村や町周辺には弱い魔物しかいない。
 これは強い魔物が生息するところには村や町が作れないからと言う説明が付くんだけど、でも旅立ちの村周辺の魔物が世界で一番弱いというのはまさしくゲームの都合だろう。
 これと同じ様な力が、この人が住む町や村には魔力溜りができないという部分に働いているんじゃないだろうか?

 でももしそれが正しいとすると、そのゲームの都合に当たるものはなんなのだろう?
 ここがゲームの世界ではないと言うのは間違いないから本当にゲーム製作者の思惑でこの様な事が起こっているとは考えられないし、巨大な力を持った何かの意思によってこの様なことになっているならそれは一体誰なのか?

 そんな絶対的な力を持つ存在って……。

「もしかして、このせかいには、ほんとうにかみさまがいる?」

 僕は我ながらとんでもないと思うような結論に達してしまい、ついそれが口に出てしまった。
 だから慌てて誤魔化そうとして、笑いながら否定しようとしたんだけど。

「なんだルディーン、いきなり。神様がいるなんて当たり前じゃないか」

 お父さんのこの言葉で、その笑顔は凍りついてしまった。
 そんな僕の様子にはまるで気付いていないのか、お父さんは神様が本当にいる証拠を幾つか語りはじめた。

「神託により、その御姿を刻印することが定められている金貨を偽造したり金の配合比率を下げたりすると、創造神ビシュナ様から天罰が下ると言うのは有名だな。その他にも豊穣の神ラクシュナ様を怒らせた国が大飢饉に見舞われて滅びかけたと言う話もある」

「えぇっ!? かみさまをそこまでおこらせるなんて、そのくにはなにをしたの?」

 そんな実例があるのなら実際に神様がいるのだろうけど、そんな神様に滅ぼされかけるなんて、その国は一体何をしたんだろう?
 普通に考えて実在する神様に喧嘩を売るなんて、普通ではありえない話だと思うんだけど。

「聖公国ウィンダリアという国があってな、そこはこの大陸でも一番小さな国なんだがその首都、聖都アルテニアは豊穣神ラクシュナ様を信仰する者たちの聖地と呼ばれる場所なんだ。150年ほど前、事もあろうにその聖都に対して侵攻計画を立てた国があったんだが、実際にその準備を始めた所3年以上にも及ぶ大飢饉に見舞われる事になったそうだ。そして、それによってこの侵攻を断念する事になったそうなんだけど、当然それだけでは神の怒りが解ける事はなくて最終的に聖都アルテニアにその国が大神殿を建立して許しを請うことによってやっと飢饉は終わり、その国は滅亡を免れたそうだぞ」

 実際に神様がいる世界でその聖地に侵攻計画を立てるって、いったい何を考えているのやら。
 そりゃ神様が怒るのも無理ないよね。

「そんなにつづいたのか。こわいね」

 僕のこの言葉を聞いたお父さんはにやりと笑い、僕に驚く様な事を教えてくれた。

「実はな、聖都アルテニアに攻め込もうと考えたのはアトルナジア帝国。つまりこの国だ。覚えて置けよルディーン、神様は本当にいるし、その時にラクシュナ様が御許しにならなければこのグランリルの村も滅びていただろうからルディーンも生まれてこなかったんだぞ」

 なんと、まさかそんな馬鹿なことをした国が帝国だったなんて。
 僕が生まれてから8歳の誕生日までこの国が他の国と戦争をしたなんて話が一度も聞いたことがないから、てっきり他国とは共存共栄をする国だと思っていたのに。
 ん? 待って、もしかしたらその失敗があったからこの国は戦争をしない平和な国になったのかな? そう言えば帝国って周りの小国を平定した国の呼称だし、昔は戦争ばかりしていたって考える方が当たり前なのかな?

「それに回復魔法も神様の奇跡だろ? それが使えるルディーンから神様が本当にいるのかなんて聞かれるとは父さん、思ってもみなかったよ」 

「そういえばそうだね。ぼくがきゅあをつかえるのって、かみさまのおかげだった」

 最後に一番根本的なことを指摘されて、思わず笑ってしまう僕。
 ゲームではなくなってしまったこの世界でも信仰系の魔法である治癒魔法が使えるのだから、考えてみれば神様がいるなんて当たり前だよね。


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